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Statement

White Note: Alberto Giacometti / Satoshi Hashimoto

June 19, 2016 / Action

“White Note: Alberto Giacometti”
抽象直接行動198の方法(仮): 112. 政府紙幣を拒否する、113. お金を落とす/拾う
198 Methods of Abstract Direct Action (tentative) : 112. Refusal of a government’s money, 113. Drop/pick up money

バーゼルで開催されるアートフェアLISTEでの展示
LISTE – Art Fair Basel 2016
Satoshi HASHIMOTO “Everything and Others”
Aoyama Meguro
June 13-19 2016, 12 am – 5 pm
Burgweg 15 – CH- 4058 Basel Switzerland
http://www.liste.ch
 
チューリヒでのダダ発祥から100年、アルベルト・ジャコメッティ没後50年、20周年となるマニフェスタは今年はチューリヒにてアートバーゼルと時期を合わせ開催。チューリヒ、バーゼル界隈のスイスは盛大なアートの事業に湧いている。
 
18の時、フランスに住みはじめたFと一緒にジャコメッティの故郷スタンパ村を目指してスイスを旅した。目的地に辿り着き、気持ちの高まった2人は無謀にも次のバス停まで歩くことにした。山脈に囲まれた地形は早くから太陽を隠し、変わりやすい山間の天気は土砂降り、雷となった。幸い民家を見つけ小屋に泊めさせて貰うが、翌日は熱と嘔吐でダウン。Fに連れられ夜行列車へ。今度は夜行列車でFが熱と嘔吐で苦しむ。アナウンスで目覚めると目的地、慌てて2人は列車を降りる。朦朧な意識の中、寝台に貴重品を忘れたことに気付く。戻ってみたが現金は奪われている。幸いパスポートは残っていた。ホテルへ辿り着くとなんとまたパスポートがなくなっていることに気付く。どこかに置き忘れたか、スリにあったか、記憶がない。あれやこれやの大変な手続きを習得の浅いFのフランス語に頼った(Fとは今年展覧会で一緒になった。Fさん、あの時はありがとう)。嘔吐と熱で体は痩せ、旅費は失われ、僅かな食事で残りの旅を過ごした。
 
永世中立国としてEUにも加盟しないスイスの通貨は最も安定した通貨と言われ、その紙幣は最も偽造が難しい。その100フラン紙幣にはジャコメッティの肖像と彫刻が印刷されている。ストイックさと清貧さで知られた芸術家が紙幣の絵柄とされることの皮肉。世界で最も印刷された書物は聖書だが、それよりも遥かに多く、最も印刷されたプリントは紙幣と言えるだろう。2008年にアメリカに滞在した際にドル紙幣のインクを削り落とした「White Note」を作成して使用したことがある。今回スイスでのアートフェアに際し、ジャコメッティが制作の末に意に反して彫刻を極細にしてしまう逸話に絡めて、彼の紙幣を削ることにした。額面の金額と一致する貨幣の衣を削ぎ落とし、1点物の不確定なヴァリューとして骨董やアートの衣を被る。
 
地球から眺めた月と太陽はほぼ同じ大きさに見える(よって皆既日食が成る)が、実際のサイズは400倍程の差がある(質量は2700万倍程)。統計データによれば、世界の資産額トップの人口1%の総資産と残りの人口99%の総資産はほぼ同じ額だ。現在開催されているアートバーゼルにはその1%の資産家が多数集ってくる。会場にいる人々の間には体重や身長は同じように見えても、抱える資産量は月と太陽の比率以上に激しい差を持った関係が存在する。
(余談だが、アートバーセルに展示していたオランダのギャラリーではKの《空気》がバックヤードにしまわれ、1点のみバックヤードの壁面に掛かっていた。VIPプレヴューではキュレーターHがアートバーセルに訪れていたようだ。)
 
多くは資産を増やすことを期待して作品を購入する。あるいはスイスの特性を利用して資産を隠したり税から逃れるのと同じような構造でアートは利用される。しかしながらアートはある面で資産家の資産を削る目的でなされる。ダイエットへの意識の高い資産家が体重を削る努力をするように、資産のダイエットの意識を持って作品購入する者もいるが、それは名誉を増やすためでもあるだろう。そして一部のアーティストは大層な資産家になる。饑餓で痩せ細った者よりもさらに細いジャコメッティの彫刻は昨年のオークションで1億4,128万5,000ドルと、彫刻作品としての史上最高落札価格で落札された。
 
ペインティングもスカルプチャーも削ぎ落としたアーティストは昨今、政治的、道徳的、あるいはナラティブなコンテクストを添付して作品を仕立て上げはじめた。さらに第3者からの批評や批判、ゴシップなども絡んでくる。では、それらを削ぎ落とすにはどうすればよいか。
 
今回一緒に旅するAは頻繁にお金を落とすそうだが、スイスの道端にて生まれて初めてお金を(10スイスフラン紙幣と1スイスフラン硬貨の2回も)拾った。
 
216年6月18日 橋本聡

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